沢田 輝
研究テーマ: 地球史前半の大陸地殻成長史
キーワード: 大陸地殻、ジルコン、砕屑性ジルコン、ICP-MS、砂岩、オルソクォーツァイト
研究内容:
地球史45億年の中で、花崗岩質大陸地殻がどのように成長してきたかは地球科学の重要課題だが、未だに決着していない。花崗岩質大陸地殻は沈み込み帯火成活動を通じて増加する一方、再溶融や高度変成作用などのリサイクルを被って見かけの年代が若返り、さらに沈み込む プレートによって削剥されマントルへ持ち去られる構造侵食などの作用によって減少する。 地球内部が高温だった時代には、現在よりも活発な火成活動があり、大陸地殻が多量に形成されたはずだが、地球史前半(23億年前以前)の 大陸地殻は全体の20%以下しか無い。つまり、地球史を通じて大規模な大陸地殻の二次的消失やリサイクルが起きてきたはずである。
修士までの研究では、砕屑性ジルコン年代測定およびそれら年代データのグローバルなコンパイルによって大陸成長史の推定を行ってきた 。砕屑性ジルコン年代データを時代ごとに区切ってコンパイルしそれらを比較することで、大陸地殻の年代構成が経年変化していく様子を 解明してきた。
ジルコン年代学の進展と分析技術の向上とともに、より細かいジルコン中のインクリュージョン鉱物の分析などが「細かい方向」への進歩 が目指されているが、自分の研究ではは逆にあえて「粗い方向」を目指したい。 熱力学の支配下にある火成岩・変成岩と比べて、堆積岩は地球表層での侵食・運搬・堆積・続成の各作用が複雑に絡んでいて取り扱いが難 しい一方で、広く大陸を削りとって多くの貴重な情報をかき集めてできた岩石とも言える。今後の研究では「大陸の広さ(仮)」を反映する 指標として砕屑性ジルコンの母岩たる堆積岩や堆積岩体そのものを合わせて扱っていくことを考えている。特に、オルソクォーツァイトは 広い露出面積の大陸が無いと形成されない熟成した砂岩であり、その形成が地球史の中でどのように変遷してきたかに興味を持っている。
現在は、主としてアフリカ南部ジンバブエ地塊の30~34億年前という地球史最古クラスのオルソクォーツァイトを対象にしている。
好きな鉱物: ジルコン、緑簾石、柘榴石
公表論文(査読有り):
[1] Sawada, H., Maruyama, S., Sakata, S., & Hirata, T. (2016). Detrital zircon geochronology by LA-ICP-MS of the Neoarchean Manjeri Formation in the Archean Zimbabwe craton–the disappearance of Eoarchean crust by 2.7 Ga?. Journal of African Earth Sciences, 113, 1-11.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1464343X15300832